2014年6月27日金曜日

ベビーカー

 狭い店内でベビーカーを押していると、前から六十歳前後のご婦人が来られた。すれ違うほどのスペースがなかったので、私は手前で曲がったのだが、その方はベビーカーが来る!ぶつかる!どこへ逃げよう!と焦ったのだろう、私が曲がり終わった後に、「ああああ~」と声を出してのけぞり、バリボリバリ…と後ろに積んであったインスタントラーメンの山にお尻を付いてしまった。ベビーカー、恐るべし!
 その店を出てすぐ、白い杖の男性がパチンコ屋の前に停めてあるたくさんの自転車の隙間を縫うように歩いているのを見かけた。何か勘違いされて、思いがけない場所に迷い込んでしまったのかな?と心配しながら、ただ見ていた。ベビーカーを押していなければ、すぐに近寄って声をかけたかもしれないが、段差があるし、ベビーカーの通れないような隙間を歩かれていたので、戸惑いながら見ていた。するとその男性は、パチンコ屋の入り口までたどり着くと平然と入店された。目の不自由な方はパチンコをしないし、狭いところは歩かないと、勝手な先入観を抱いていた自分に気づいた。ベビーカー、ありがとう!

吉ちゃん作:ちくわをにぎる八ちゃん

2014年6月18日水曜日

徳島へ

 週末、一泊二日で徳島の実家に帰った。八ちゃんは初めての徳島、飛行機も初めて。往復ともおりこうさんに過ごしてくれた。機内でいただいたリンゴジュースを、初めてストローを使って飲んだ。最初はなかなか吸えなかったけど、すぐコツをつかんで上手に飲みだした。生まれたばかりの時も、初日から上手におっぱいを飲んで看護師さんにほめられたっけ。
 実家には吉ちゃんと同じ年頃のはとこのお友達など、親戚も大勢遊びに来てくれて、庭でバーベキューやスイカ割り、花火を楽しんだ。昼間に自家農園で採れたばかりのズッキーニがとても水々しくて美味しかった。八ちゃんは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃん、叔父さん叔母さんに会うのも初めてだった。吉ちゃんが二歳前後の頃は人見知りが激しく、初対面の人とは目を合わせられず、眼鏡の人と若い男の人の顔を見ると大泣きしていたけれど、八ちゃんは人懐っこくて皆に遊んでもらえた。93歳のひいおじいちゃんが、「八ちゃんは8月24日に二歳になるか!」と、誕生日を覚えていてくれたのがとっても嬉しかった。年を取ると記憶力でこんなに人を感激させられるなんて、なんかワクワクする!
 翌朝、普段は寝坊助の吉ちゃんが、自ら5時に起きて野菜の収穫を手伝わせてもらった。お昼にお母さんが作ってくれた、朝採りいんげん豆の天ぷらが柔らかくてとっても美味しかった。




2014年6月13日金曜日

グソクムシウインナー

 吉ちゃんの遠足の前夜、夜中十二時過ぎに帰ってきた主人とパソコンをやりながら話しているうちに、ウィンナーで作ったグソクムシ(深海の巨大なダンゴムシ)の画像を見つけた。丸まった背中やピンと伸びた触覚、うじゃうじゃ細かい足などグロテスクなほどリアルに出来ていて、作り方まで載っていた。「これを明日の弁当に入れてあげたい。きっと吉ちゃん喜ぶ!」と主人は大興奮し、二人で作り始めた。細かい切り込みを入れるのに苦労して中々うまくできず、焼いては修正を何度か繰り返し、二時頃にようやく完成した。私は力作を一匹だけ、主人は型崩れしてもはやムシと呼べないもの(かつてグソクムシと呼ばれていたウィンナー)を五匹ぐらいと、ダイオウイカと命名したタコさんウインナーを完成させた。
 主人は自分の作品をそっちのけで、私が作ったのを何枚も写真に撮っていた。たとえ、やたら切り込みが入ったぐちゃぐちゃでも、夜中に愛情込めて作ったんだから、記念に撮ればいいのに…と思いつつ、勝ったような気がして何だか気分が良かった。結局弁当箱のスペースの都合で私の一匹と、主人のダイオウイカ一匹だけお弁当に入れた。
 「ビックリしたかな?友達になんて言われたかな?女の子は嫌がったかな?」などワクワク想像しながら吉ちゃんが遠足から帰ってくるのを待ち、いざ感想を聞いてみると「おいしかった」と、形より味の第一声だった。友達の反応を聞くと、最初に食べちゃったから誰にも見せられなかったと、残念そうに話した。にんまりしながら箸でグソクムシをつまんで観察し、そのままパクリと食べた吉ちゃんの姿が目に浮かんだ。
 その夜遅くに仕事から帰ってきた主人が「会社であのグソクムシウインナーの写真を見せたら皆、驚いていた」と言いながら、「すごい!」「感動!」など絶賛されたメールのやり取りを、誇らしげに見せてきた。すると、私の力作はちゃっかり主人が作ったことになっている。自分の作品を撮らなかった訳はこういうことか!このペテン師!詐欺師!!
 それから夫婦喧嘩が勃発したのは言うまでもない。